「A社とB社が事業の合併に際してこの度基本合意をしました。」
ニュースでよく耳にする、こんなフレーズ。
一見すると「合意=契約が成立した」と思われがちですが、実はこの“基本合意”という言葉には、一般の方には分かりにくい 契約実務ならではの意味 が含まれています。
特に「基本合意書」と「合意書」は、言葉は似ていますが使う目的・法的拘束力・実務上の位置づけが全く異なります。
今回は行政書士として契約書を多く扱ってきた立場から、両者の違いをわかりやすく整理し、具体例を交えて解説します。
■ 結論:基本合意書と合意書は“目的”と“法的拘束力”が違う
「基本合意書」と「合意書」
この2つの言葉、とても似ているんですが、実は“目的”と”法的拘束力”が全く違うんです。
| 項目 | 基本合意書 | 合意書 |
|---|---|---|
| 目的 | 大枠の方向性を示す | 合意内容を最終確定する |
| 法的拘束力 | 付けないことが多い | 原則あり |
| タイミング | 契約の前段階 | 契約の段階 |
| 実務的位置づけ | “方向性の確認” | “内容の確定” |
基本合意書(Basic Agreement / MOU)とは?
目的:これから協力する“大枠”を確認するための文書
基本合意書は、まだ契約内容が固まっていない段階で今後協力していく方向性・骨組みをまとめたものです。
- 今後協議を進める意思がある
- 共同で取り組みたい方向性に合意した
- ただし、最終的な条件はまだこれから
- 現時点では拘束されない範囲で合意しておきたい
そんな場面で使われます。
基本合意書でよく見られる内容
- 今後の協議スケジュール
- 大まかな役割分担
- 将来の契約締結に向けた前提条件
- 情報交換のルール
- 秘密保持条項(NDA)
- ※「本書は法的拘束力を有しない」条項

特徴:法的拘束力を“付けない”ことが多い
基本合意書にはよく「本書は法的拘束力を有しない」という文言が入っています。
これは、まだ条件が固まっていないため、
・法的に拘束されたくない
・柔軟に撤退できるようにしておきたい
という実務上の考えによるものです。
合意書(Agreement)とは?
目的:最終的な合意内容を“確定”させる書類
合意書は、当事者同士がすでに合意に達した事項を正式に書面化するための文書です。
- 取引内容の最終決定
- 契約の解除(契約終了)
- 示談の内容
- 債務の支払計画
- サービス条件の変更
など、具体的な取り決めを記載します。

合意書は原則として法的拘束力を持つ
合意書はほとんどの場合、契約書と同じく署名押印により法的効力が生じます。
つまり、記載された内容を履行しなければ債務不履行として責任が生じます。
【具体例】ホンダ×日産の経営統合 ― 基本合意でも破談になった実例
2024年12月、ホンダと日産は「経営統合に向けた検討に関する基本合意書」を締結。
大手2社が統合に向けて動くとして大きなニュースになりました。
しかしその後—
- 経営体制や意思決定の仕組みなどで両社の考えが一致せず
- 2025年2月、両社は協議継続は困難と判断
- 基本合意書を“解約”し、経営統合の検討は終了した
という正式発表が行われました。
つまり、
基本合意=契約ではなく、撤回される可能性がある
ということを示す非常に分かりやすい例です。

この出来事は、基本合意書が“方向性を示しただけの文書”にすぎず、最終合意(契約)とは全く別物であるという実務のリアルが世間に広く伝わった事例でした。
基本合意書と合意書の違いをよりシンプルにまとめると…
基本合意書
「これから協力していきたい。方向性はこうしよう」
→ 契約前の“前提条件の確認”
→ 拘束力は弱い or 付けない
合意書
「この内容で最終的に決定しました」
→ 契約の一種
→ 拘束力あり
名前は似ていますが、使う場面も効力も全く別物です。
行政書士としての実務的な使い分け
- 業務提携の初期段階 → 基本合意書
- 変更や解約条件の確定 → 合意書
- トラブル解決 → 示談合意書
- 最終契約の締結 → 契約書
このように、
「内容が固まっていない段階では基本合意書」
「固まったら合意書(または契約書)」
と覚えておけばまず間違いありません。
まとめ|“名前”ではなく“目的”と“拘束力”で判断する
- 基本合意書は契約前の文書で、方向性の確認が目的
- 合意書は最終的な取り決めを行う文書で、法的拘束力がある
- 基本合意書は撤回・破棄されることもある(ホンダ×日産の例が典型)
つまり、
どちらが重要なのかではなく、“何を決めたいのか”で使い分けることが大切
ということです。
当事務所では契約書・合意書の作成サポートを行っています
ということで、今回は 基本合意書と合意書の違いを、ホンダと日産の経営統合のお話を交えて解説致しました。
今回のお話 いかがでしたでしょうか。
当事務所(行政書士やまもと事務所)では、
- 基本合意書
- 合意書
- 覚書
- 契約書全般
- 条項チェック
- トラブル防止のための文案整備
など、事業者様の実務に合わせた文書作成を行っています。
「この書類は基本合意書で良いのか?」
「合意書にした方が安全か?」
といったご相談にも専門的に対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
行政書士やまもと事務所
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