「転飼届」ってなに?趣味の養蜂からはちみつ販売を始める前に知っておきたいこと【岡山県版】

各種許認可

みなさん、こんにちは。
岡山県倉敷市の行政書士やまもと事務所の山本です。
今回は、趣味の養蜂からはちみつ販売を始めるときに注意したい手続きについてお話しします。

「庭や畑で飼っているミツバチのはちみつが、思ったよりたくさん採れた」
「せっかくだから、少し販売してみようかな」

趣味で養蜂をされている方なら、一度は考えたことがあるかもしれません。
ただし、ここで大切なポイントがあります。

はちみつを販売した瞬間、法律上は“養蜂業者”として扱われる可能性があります。
そして、岡山県では、自宅以外の場所に巣箱を置いている場合、「転飼許可」が必要になる可能性があります。

「えっ、巣箱を動かしてないのに転飼なの?」と思われるかもしれません。

私も最初はそう思いました。
ミツバチより先に、こちらの頭の中がブンブン飛び回りました。
けどね、違うんですよ。

今回は、岡山県で趣味の養蜂からはちみつ販売を始めたい方に向けて、転飼届・転飼許可・蜜蜂飼育届・保健所の手続きについて、できるだけわかりやすく整理します。

なお、本記事は岡山県の運用を前提にしています。
転飼の取扱いは都道府県ごとに異なる場合がありますので、岡山県以外の方は、必ずお住まいの都道府県にご確認ください。

  1. そもそも「転飼」とは?
    1. 転飼とは
    2. 定飼とは
  2. 岡山県では「自宅以外の場所」は転飼扱いになる可能性があります
    1. 自宅以外なら、固定設置でも「転飼」とされることがあります
  3. 趣味の養蜂なら転飼許可は不要?販売すると必要?
    1. 自家消費だけなら転飼許可が不要な場合があります
    2. はちみつを販売すると「養蜂業者」に該当する可能性があります
  4. 自宅以外で養蜂している場合の考え方
    1. 受粉目的だけの場合
    2. 採蜜するが自家消費だけの場合
    3. はちみつを販売する場合
  5. 受粉目的の巣箱でも、はちみつを販売するなら注意
    1. 受粉用レンタル蜂のようなケースは例外になることも
  6. 岡山県での転飼許可の手続きスケジュール
    1. 主な流れ
      1. 1. 蜜蜂飼育届を提出する
      2. 2. 転飼計画書を提出する
      3. 3. 転飼調整会議が行われる
      4. 4. 転飼許可申請書を提出する
      5. 5. 翌年1月1日から12月31日までが許可期間
  7. 提出先はどこ?
  8. 申請する蜂群数は「年間の最大予定数」で考えましょう
    1. 例:現在10群でも、30群まで増える予定なら30群で申請
  9. 転飼許可の手数料はいくら?
  10. 転飼許可が下りないこともある?
    1. 周辺の養蜂家との事前調整が大切
  11. 無許可で販売するとどうなる?
  12. はちみつ販売には保健所の手続きも必要です
    1. はちみつ販売で確認したい主な手続き
  13. まとめ:販売を始める前のチェックリスト
  14. まとめ:はちみつ販売は「売る前の準備」が大切です

そもそも「転飼」とは?

養蜂には、主に次の2つの考え方があります。

転飼とは

転飼とは、蜜源となる花を求めて、季節ごとに場所を移しながらミツバチを飼育することです。

たとえば、春はレンゲ、夏は山の花、秋は別の地域の花、というように、花の時期に合わせて巣箱を移動させるイメージです。

定飼とは

定飼とは、巣箱を移動させず、同じ場所でミツバチを飼育することです。

言葉だけ見ると、「うちは巣箱をずっと同じ場所に置いているから、定飼でしょ?」と思いますよね。
ところが、岡山県では少し注意が必要です。

岡山県では「自宅以外の場所」は転飼扱いになる可能性があります

岡山県には、岡山県蜜蜂転飼条例があります。
この条例では、県内で転飼をする場合、知事の許可が必要とされています。

目的は、養蜂家同士の巣箱が一部の地域に集中しすぎないようにするためです。
ミツバチにとって花は大切な食料です。
そのため、同じ地域に蜂群が集まりすぎると、蜜源が足りなくなる可能性があります。

人間でいうと、人気ラーメン店に全員が一気に押し寄せるようなものです。
ミツバチ界にも、ちゃんと順番と距離感があるわけです。

自宅以外なら、固定設置でも「転飼」とされることがあります

実際の運用では、次のように扱われます。

自宅所在地以外の場所でミツバチを飼育する場合、巣箱を一切移動させていなくても「転飼」に該当する可能性があります。

つまり、たとえば次のようなケースです。

  • 親族の畑に巣箱を置いている
  • 自分が所有する山林に巣箱を置いている
  • 知人の土地を借りて巣箱を置いている
  • 自宅とは別の場所に固定して巣箱を置いている

これらは、巣箱を動かしていなくても、自宅以外であれば転飼として扱われる可能性があります。

「動かしてないのに転飼?」と思うところですが、蜂群の配置調整という目的から、自宅以外での飼育を広く転飼として扱っているようです。

趣味の養蜂なら転飼許可は不要?販売すると必要?

ここで気になるのが、「趣味で飼っているだけでも転飼許可が必要なのか?」という点です。

結論からいうと、ポイントは販売するかどうかです。

自家消費だけなら転飼許可が不要な場合があります

趣味でミツバチを飼育し、採れたはちみつを自分や家族で楽しむだけであれば、転飼調整の対象外となる場合があります。
ただし、採蜜をする場合は、別途蜜蜂飼育届が必要になることがあります。

はちみつを販売すると「養蜂業者」に該当する可能性があります

一方で、採れたはちみつを販売する場合は注意が必要です。
たとえ趣味で始めた養蜂であっても、はちみつを販売すると、養蜂業者に該当する可能性があります。

たとえば、次のようなケースです。

  • 直売所で販売する
  • フリマアプリで販売する
  • ネットショップで販売する
  • 知人に有償で譲る
  • イベントで販売する

「少しだけだから大丈夫」と思いがちですが、有償で譲る以上、販売にあたる可能性があります。

はちみつは甘いですが、手続きの世界は意外と甘くありません。

自宅以外で養蜂している場合の考え方

自宅以外の場所でミツバチを飼育している場合、整理すると次のようになります。

受粉目的だけの場合

果樹や野菜の受粉のためだけにミツバチを置いており、採蜜もしない場合は、蜜蜂飼育届や転飼許可が不要となる場合があります。

ただし、具体的な取扱いは事案によって異なりますので、事前確認が安心です。

採蜜するが自家消費だけの場合

採れたはちみつを自分や家族で食べるだけの場合は、転飼許可までは不要となる場合があります。

ただし、採蜜を行う場合は、蜜蜂飼育届が必要になることがあります。

はちみつを販売する場合

自宅以外の場所で飼育しているミツバチから採れたはちみつを販売する場合は、養蜂業に該当し、転飼許可が必要になる可能性が高くなります。

この点は、趣味養蜂から販売に進むときの大きな分かれ道です。

受粉目的の巣箱でも、はちみつを販売するなら注意

ここまで整理してきた中で、こういった方いませんか?

「うちの巣箱は果樹の受粉のために置いているだけです」

この場合でも、採れたはちみつを販売するのであれば、養蜂業者に該当する可能性があります。

つまり、受粉目的で置いている巣箱であっても、そこから採れたはちみつを販売する場合、自宅以外であれば転飼許可が必要になることがあります。

受粉用レンタル蜂のようなケースは例外になることも

一方で、イチゴハウスなどで見られるような、受粉に必要な期間だけミツバチを導入し、その後に返却するようなケースでは、転飼の対象外となることがあります。

たとえば、以下のような場合。

  • 受粉のために一定期間だけ蜂群を借りる
  • 期間終了後に養蜂業者へ返却する
  • 採蜜や販売を目的としていない

ただし、こちらも具体的な状況によって判断が分かれる可能性があります。

岡山県での転飼許可の手続きスケジュール

転飼許可で特に大切なのが、スケジュールです。
転飼許可は、思い立ったらすぐに取れるものではありません。

「来月から販売したいです!」と思っても、すぐに許可が出るとは限りません。
ミツバチの世界にも、行政のカレンダーがあります。

主な流れ

岡山県での一般的な流れは、次のようになります。

1. 蜜蜂飼育届を提出する

まず、ミツバチを飼育し採蜜する場合には、蜜蜂飼育届の提出が必要になることがあります。
これは、養蜂振興法に基づく届出です。

販売するかどうかに関係なく、採蜜する場合には確認しておきたい手続きです。

2. 転飼計画書を提出する

転飼許可を受けるためには、まず転飼計画書を提出します。

岡山県では、例年おおむね、
8月中旬から9月末ごろが提出時期とされています。

3. 転飼調整会議が行われる

その後、蜜蜂転飼調整委員会・転飼調整会議が行われます。

時期としては、例年11月上旬から中旬ごろです。

ここで、希望する飼育場所や蜂群数について調整が行われます。

4. 転飼許可申請書を提出する

調整会議の後、転飼許可申請書を提出します。

5. 翌年1月1日から12月31日までが許可期間

許可の対象期間は、原則として翌年1月1日から12月31日までです。
つまり、今年の途中で急に販売を始めたいと思っても、その年の許可がすぐに取れるわけではありません。

販売を考えている方は、前年の秋ごろから準備を進めることが大切です。

提出先はどこ?

転飼に関する書類の提出先は、原則として自宅所在地を管轄する県民局です。

飼育場所が自宅とは別の市町村にある場合でも、自宅所在地を基準に判断されます。
たとえば、自宅は倉敷市、巣箱は別の市町村にあるという場合でも、基本的には自宅所在地を管轄する県民局に提出することになります。

なお、提出方法は、郵送または持参です。

申請する蜂群数は「年間の最大予定数」で考えましょう

転飼許可では、蜂群数も重要です。

申請する蜂群数は、現在の数ではなく、年間で最大になる予定数で考える必要があります。

例:現在10群でも、30群まで増える予定なら30群で申請

たとえば、現在は10群でも、春の分蜂などで増やし、年内に30群まで増える予定がある場合は、最初から30群で計画しておく必要があります。

なぜなら、許可後に蜂群数を追加することは、原則として難しいからです。

ミツバチは分蜂によって自然に増えることがあります。
「気づいたら許可数を超えていた」ということにならないよう、あらかじめ余裕を持って計画しておきましょう。

ミツバチは人間の予定表を見て増えてくれるわけではありません。
「来週の火曜日に3群だけ増えてね」とお願いしても、たぶん聞いてくれません。

転飼許可の手数料はいくら?

転飼許可の手数料は、許可を受ける最大蜂群数によって決まります。

岡山県では、最大蜂群数 × 150円が目安となります。

たとえば、10群と30群だと以下の費用になります。

  • 10群の場合:10群 × 150円 = 1,500円
  • 30群の場合:30群 × 150円 = 4,500円

手数料自体は、それほど高額ではありません。
ただし、手数料が安いからといって手続きを後回しにすると、販売開始のタイミングに間に合わない可能性があります。

大切なのは、金額よりもスケジュールです。
なお、転飼許可が不要なケース(趣味養蜂など)であれば、手数料が発生する制度はありません。

転飼許可が下りないこともある?

転飼許可は、申請すれば必ず認められるものではありません。
転飼制度の目的は、蜂群の配置調整です。

そのため、希望する飼育場所の周辺にすでに養蜂家がいて、蜜源に対して蜂群が多すぎると判断されると、許可が下りない可能性があります。

周辺の養蜂家との事前調整が大切

新しく養蜂を始める場合や、販売目的で蜂群を増やす場合は、周辺の養蜂家と事前に調整しておくことが望ましいです。

また、巣箱を置く土地については、自己所有地でない場合はもちろん、親族の土地であっても、事前に土地所有者の同意を得ておきましょう。

「親戚だから大丈夫」と思っていても、あとで話がこじれると、ミツバチより人間関係のほうが刺さることがあります。

無許可で販売するとどうなる?

自宅以外の場所で飼育しているミツバチから採れたはちみつを、転飼許可を受けずに販売していた場合、行政から指導を受ける可能性があります。

具体的には、以下のような対応が考えられます。

  • 巣箱を自宅所在地へ移動するよう指導される
  • その年の販売を自粛するよう求められる
  • 翌年分の転飼計画書を提出するよう指導される

さらに、指導に従わない場合には、蜂場の閉鎖や撤去命令、罰則の対象となる可能性もあります。

「少しだけだから大丈夫」と思って販売を始めるのは危険です。
はちみつ販売を考えている場合は、必ず事前に必要な手続きを確認しましょう。

はちみつ販売には保健所の手続きも必要です

ここまで説明してきた転飼許可は、主に養蜂に関する手続きです。

しかし、はちみつを食品として販売する場合は、別途、食品衛生に関する手続きも必要です。

はちみつ販売で確認したい主な手続き

はちみつを販売する場合には、次のような点を確認しましょう。

  • 保健所への営業届出
  • 食品衛生責任者の設置
  • HACCPに沿った衛生管理
  • 食品表示基準に基づくラベル表示

販売場所が直売所でも、ネット販売でも、基本的に食品を販売する以上、食品衛生法や食品表示法の確認が必要です。

特にラベル表示では、以下の記載が必要になることがあります。

  • 名称
  • 原材料名
  • 内容量
  • 賞味期限
  • 保存方法
  • 製造者または販売者
  • 原産地表示

また複数の場所で採れたはちみつを混ぜて販売する場合には、表示内容にも注意が必要です。

まとめ:販売を始める前のチェックリスト

最後に、趣味養蜂からはちみつ販売へステップアップする際のチェックポイントを紙芝居形式でまとめてみました。
これから養蜂業に挑戦を検討されている方はこちらも是非チェックください。