取引先と打ち合わせをしているときに、
「それでは秘密保持契約を結んでおきましょうか?」
と言われて、少し戸惑った経験はありませんか?
営業担当の方や中小企業の経営者の方にとって、「そんな大げさなもの、必要なの?」と感じることも多いかもしれません。
でも実は、この秘密保持契約は、お互いの信頼を守るための大切な仕組みなんです。
今回は、難しい法律用語を使わずに、営業現場で「NDAを結ぶべき場面」と「誓約書でも十分なケース」について、行政書士の立場からやさしく解説します。
NDAってそもそも何?
秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)とは、取引や打ち合わせの中で知り得た情報を、第三者に漏らさないように約束する契約のことです。
「正式な契約を結ぶ前に、アイデアや仕様を話したい」
「自社の仕組みを見せないと提案できない」
そんなときに、NDAを交わしておくことで情報漏えいを防ぐことができます。
つまり、NDAは安心して情報交換を行うための“信頼のバリア”なのです。

NDAが必要になる場面の例
営業・製造・開発など、さまざまな現場で登場する契約ですが、特に次のようなケースで締結されることが多いです。
- 営業提案や見積段階で社内資料を見せるとき
→ 原価情報や販売戦略など、社外秘データを提示する場面。 - 共同開発やOEMの打ち合わせ
→ 双方の設計情報やノウハウを共有する必要がある場合。 - 業務委託・外注先へのデータ提供
→ 顧客リストや個人情報を共有する業務など。 - 新製品・新サービスの構想を話すとき
→ 試作段階のアイデアや技術的特徴を開示する場合。 - 補助金や共同研究などの協業提案
→ 事業計画や財務データを含む資料を相手に示す場合。

たとえば、提案書や試作品の情報が社外に漏れてしまうと、競合に真似されたり、取引条件に影響したりするリスクがあります。
そのため、こうした情報を扱う際は、NDAを交わしておくことが非常に重要です。
NDAを結ぶことで得られる安心感
秘密保持契約を結ぶことで、次のようなメリットがあります。
- 「信頼できる相手だ」と感じてもらえる
- 「言った・言わない」のトラブルを防げる
- 守るべき情報の範囲や期間が明確になる
- 会社としてのリスク管理体制を示せる
つまり、NDAは単なる書面ではなく、信頼関係を“見える化”するツールです。
特に法務部門のない会社にとっては、外部との取引を安全に進めるための第一歩になります。

すべてのケースでNDAが必要とは限らない
ただし、すべてのやり取りにNDAが必要というわけではありません。
次のようなケースでは、もう少し簡易な「誓約書」で十分なこともあります。
- こちらが一方的に情報を提供するだけのとき
- 取引前の軽い打ち合わせや資料共有
- 社外の講師・外注先などに限定的な情報を見せるとき
ここで登場するのが秘密保持誓約書です。
秘密保持誓約書とは?
秘密保持誓約書は、相手方が一方的に「秘密を守ります」と誓約する書面です。
つまり、NDAのようにお互いが署名する必要はなく、相手側の署名だけで成立する“一方的な約束書”です。
次のような実例では、誓約書で十分対応できます。
- 営業提案で資料を渡すとき
例)複合機やクラウドサービスの導入提案で、見積書や構成図を先に共有する。 - 下請け業者に製造図面を共有する場合
例)加工指示や部品図面を見せるだけで、相手から情報を受け取らないケース。 - 採用面接や業務委託の事前打ち合わせのとき
例)フリーランスにシステム概要を説明するなど、まだ契約前の段階。
このように、「情報の流れが一方向だけ」の場合は、誓約書の方が手続きも簡単でスピーディーです。
NDAと誓約書の違いを整理してみよう
| 比較項目 | 秘密保持契約書(NDA) | 秘密保持誓約書 |
|---|---|---|
| 形式 | 双方で署名・押印 | 相手方の署名のみ |
| 性質 | 双務契約(お互い守る) | 片務契約(相手だけ守る) |
| 想定場面 | 双方が情報を共有する場合 | 一方的に情報を渡す場合 |
| メリット | 相互の安心感がある | 手続きが早くスムーズ |
| デメリット | 手間がかかる | 拘束力がやや弱い |
どちらが「正解」というわけではなく、
情報の性質と取引の段階によって使い分けることが大切です。

NDAも誓約書も「中身」が大事
どちらの形式を選ぶにしても、以下の3点はしっかり押さえておきましょう。
- 守るべき情報の範囲を明確にする
→ 「何が秘密か」を明示しないと後で揉めます。 - 守る期間を決める
→ 多くは「契約終了後○年間」など。期間を区切ることで現実的に運用できます。 - 違反時の対応を定める
→ 損害賠償や違約金を定める際は、過度にならないよう注意が必要です。
形式よりも大切なのは、お互いの認識をそろえること。
1枚の誓約書でも、内容が明確なら十分に法的拘束力を持ちます。
まとめ:契約書か誓約書かは“関係性と目的”で決めよう
ということで、今回は 「NDAを結ぶべき場面」と「誓約書でも十分なケース」について、解説しました。
今回のお話 いかがでしたでしょうか。
取引先と情報を共有する関係であれば、NDAが最適。
一方的に資料を渡す程度なら、誓約書で十分。
つまり、
- どんな情報を守りたいのか
- お互いに情報を出し合うのか
を考えて、適切な形を選ぶのがポイントです。
「形式」ではなく「信頼関係を守るためのルールづくり」として、自社に合った方法を選びましょう。
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