~行政書士がやさしく解説します~
みなさん、こんにちは。
岡山県倉敷市で行政書士をしている山本です。
契約書を作っているとき、こんな疑問を持ったことはありませんか?
「契約書に書いておけば、どんな内容でも有効になるんですか?」

実はそれ、法律の“任意規定”と“強行規定”の違いが関係しています。
今日はこの法律の“任意規定”と“強行規定”の違いについて 経営者の方にも分かりやすく説明します。
任意規定とは?(合意で自由に変えられるルール)
任意規定とは、当事者同士の話し合いで自由に決めていいルールのことです。
たとえば民法では「原則こうします」と書かれていますが、当事者が話し合って「うちはこうしよう」と決めた場合、その合意が優先されます。
イメージとしては、「法律が用意した“初期設定”を、自分たちの都合に合わせて変更できる」ようなものです。
具体例1:支払いの時期や方法
取引先との契約で「いつ代金を支払うか」は、実は自由に決めてOKです。
たとえば、
- 納品後30日以内に支払う
- 納品の翌月末に支払う
- 契約時に全額前払いする
どれも当事者が納得していれば問題ありません。
法律には「支払いはこの日でなければならない」という決まりはないからです。

このように、法律の“初期設定”を変えて、お互いに都合の良いルールを作ることができる
――これが任意規定の考え方です。
具体例2:送料や登記費用などの費用負担
商品を販売する契約や不動産売買などでは、「送料」や「登記費用」など、さまざまな費用が発生します。
実は、法律では「原則は折半(半分ずつ負担)」という考え方ですが、実務では「送料は売主が負担」「登記費用は買主が負担」など、自由に決められます。
つまり、費用の分担方法を契約書に書けば、その合意が優先されるということです。
具体例3:納期や検収のルール
たとえば、システム開発や製造の契約では、
- 納品の期限を「◯月末まで」と決めたり、
- 検収を完了した日をもって支払い義務が発生する、
などの取り決めをよく見かけます。
これらもすべて任意規定の範囲。
お互いに納得して契約書に記載すれば、法律よりも優先されます。
まとめ:任意規定とは
- 合意すれば自由に変えられるルール
- 契約書に書かれていない場合は、法律の“初期設定”が適用される
- 契約書に書けば、自社の実情に合わせて変更できる
強行規定とは?(合意しても変えられないルール)
一方で、どんなに当事者同士が合意しても「それはダメ」とされるルールがあります。
これが強行規定です。
強行規定は、社会的に弱い立場の人を守るためや、社会全体の秩序を保つために定められています。
つまり、「自由に決めていい部分」と「絶対に変えられない部分」の“線引き”を法律がしているということです。

具体例1:労働契約のルール
たとえば、従業員と「朝4時から夜10時まで働く契約」を結んだとします。
本人が「それで大丈夫です」と言っても、この契約は労働基準法に違反していて無効です。
また、「残業代を払わない」「有給休暇はなし」なども同様です。
労働者を守るためのルール(最低基準)は、当事者の合意でも変えられません。
具体例2:消費者との契約
たとえば、通販サイトやサービス契約などで「当社はいかなる場合も一切の責任を負いません」と書いてあるとします。
しかし、これが消費者に不利な内容であれば、消費者契約法によってその条項は無効になります。
「書いてある=有効」ではなく、「法律の保護範囲を超えている=無効」になるんですね。
具体例3:社会のルールに反する契約
たとえば「違法な取引を行う代わりに報酬を払う」といった契約を交わしても、それは社会のルール(公序良俗)に反する契約として無効になります。
つまり、“契約書に書けば何でも通る”というわけではないのです。
まとめ:強行規定とは
- 合意しても変えられないルール
- 主に「労働者」「消費者」「社会秩序」を守るためにある
- 書いてあっても法律に反すればその部分は無効になる
契約書を作るときに意識すべきポイント
中小企業が自社で契約書を作るときに大切なのは、「どこまで自由に決められるのか」を理解しておくことです。
- 任意規定 → 自社の実情に合わせて“変えられる部分”
- 強行規定 → 法律で決められていて“絶対に変えられない部分”
この2つの違いを知らずに契約書を作ると、
- 「せっかく書いた条項が無効だった」
- 「相手とのトラブルを呼ぶ内容になっていた」
といったことになりかねません。
まとめ|契約書は“自由”と“ルール”のバランスが大切
契約書は自由に作れる反面、守らなければならないルールもあります。
- 契約書に何も書かなければ、法律の“初期設定”が適用される。
- 書いてよいのは任意規定の範囲まで。
- 強行規定に反する内容を書いても、その部分は無効になる。
つまり、契約書は「自由」と「制限」のバランスの上に成り立っています。
もし「自社の契約書が法律に合っているか分からない」「どこまで自由に書けるのか不安」という場合は、弁護士さんや行政書士などの専門家にチェックしてもらうのがおすすめです。
少しの確認で、将来の大きなトラブルを防ぐことができます。
当事務所のご案内
当事務所では、契約書の作成やチェック、補助金申請のサポートを中心に業務を行っています。
- 契約書の作成・リーガルチェック
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