「とりあえず覚書で済ませましょう」──その前に知っておきたいこと
「今回はとりあえず覚書で済ませましょうか」
企業間のやりとりで、こんなセリフを耳にしたことはないでしょうか。
契約書ほど大げさにしたくない、という意識から「覚書」で済ませるケースは実務でも少なくありません。
ただし、覚書と契約書を安易に使い分けてしまうと、後々トラブルに発展する可能性があります。
今回は 覚書を中心に契約書との違いや、実務での使い方、注意点を行政書士の視点からわかりやすく解説します。
覚書とは何か
覚書とは、当事者間で何らかの合意がなされたことを記録する文書の一つです。
法律上、契約書との明確な区別はなく、名称が「覚書」「契約書」「合意書」であっても、文書の中身に契約としての要素が含まれていれば、法的効力を持ちます。
契約の成立には「申込み」「承諾」「内容の確定性」が必要であり、それが書面上で確認できれば、覚書であっても契約とみなされます。
つまり、タイトルよりも中身が重要であり、
「覚書=軽い合意」
「契約書=正式契約」
という区分は、実務的には必ずしも成り立ちません。
契約書と覚書の違い
| 比較項目 | 契約書 | 覚書 |
|---|---|---|
| 目的 | 双方の義務・権利の明文化 | 合意事項の確認・補足、または簡易な契約 |
| 内容 | 原則として双務契約(双方に義務) | 内容次第で片務契約にもなる |
| 印紙 | 金額の記載がある契約には印紙税の課税対象になることが多い | 内容によっては非課税となるケースもあり |
覚書が「片務契約」となる具体例
片務契約とは、一方のみが義務を負い、他方は何の義務も負わない契約のこと(民法137条)。
覚書の内容がこの構成になっていれば、契約の形式は片務契約、つまり一方的な契約とされます。

では、どういう契約が片務契約なのか?
具体例を3つご紹介します。
具体例1:一方的な提供の約束を記した覚書
「甲は乙に対し、社屋の1室を無償で貸与する」
→ 乙は何も支払わず、ただ使用するだけ。
具体例2:無償提供・無償支援に関する覚書
「当社は、災害時に地域住民へ飲料水を提供するものとする」
→ 対価も、相手側の義務もなし。
具体例3:秘密保持に関する覚書(提供者のみ情報を開示)
「甲は乙に対し、業務上の機密情報を提供するが、乙はそれを第三者に漏らさないこと」
→ 守秘義務を負うのが乙だけで、甲は何の義務も負っていない。
覚書はどのような場面で使うのか
1 契約後の条件変更や追加合意の確認
すでに契約書を交わしている場合に、納期の変更や業務の追加など、条件の一部を変更・補足する内容を簡潔に記録するために使われます。
2 本契約を結ぶまでもないが、合意の事実を文書にしたいとき
共同イベントや一時的な協力関係、今後の提携に向けた基本的な方向性など、取引の基礎となる合意を記録するために覚書や合意書が使われます。
3 トラブルを避けるための証拠として
無償貸与や取材協力など、「好意で貸したものが戻ってこない」といったトラブルを防ぐため、責任範囲を明記した覚書を作成することがあります。
覚書に印紙は必要か
覚書であっても、金額の記載があり、対価関係が明記されている場合には、印紙税が課税されることがあります。
これは「契約書」というタイトルでなくても、印紙税法に定められた課税文書に該当するかどうかで判断されるからです。

印紙が必要な覚書の例
・業務委託費や売買代金などの金額が明記されている場合 ・報酬や役務提供に対する対価が契約成立の証拠として記されている場合
印紙が不要な覚書の例
・合意内容を確認するだけの文書(例:「変更はないことを確認する」など)
・将来の協力関係や基本合意のみを示す文書
・金額や財産的価値が伴わない内容の合意
タイトルが覚書であっても、課税対象となる場合には印紙が必要になるため、不安な場合は専門家に確認することをおすすめします。
覚書をどう作ればいいのか分からない方へ
実際に、覚書を作成したいが
・雛形を見ても内容が自社に合っているか分からない
・契約書とどちらが適切か判断がつかない
・そもそもこのまま渡してよいのか不安
といった声をよくいただきます。
行政書士やまもと事務所では、法人様からの覚書・契約書に関するご相談を多数承っております。
サポート内容
・取引内容に即した覚書の文案作成
・既存の覚書の法的チェック
・契約書と覚書、どちらが適切かの判断支援
・相手との関係性に配慮した柔らかい表現の調整
まとめ
ということで、今回は 覚書を中心に契約書との違いや、実務での使い方、注意点を解説しました。
今回のお話 いかがでしたでしょうか。
覚書も、内容次第で立派な契約書になります。
逆に、「覚書だから大丈夫」と思って曖昧な文面で交わしてしまうと、契約の成立自体が否定されたり、相手の責任を問えないという事態にもなりかねません。
内容が不安なまま提出したり、署名押印が曖昧なまま合意したりせず、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることで、安心して業務を進めることができます。
覚書の作成でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
また「ここが気になるけど専門家に頼むほどでも…」という契約書の疑問、当事務所では無料でお答えしています。
詳しくはご紹介記事をご覧ください。
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