法改正で業務範囲が拡大|特定行政書士になれば仕事は増える?

業務日誌

みなさん、こんにちは。
岡山県倉敷市の行政書士やまもと事務所の山本です。
今回は 特定行政書士についてお話しします。

行政書士として登録すると、所属する行政書士会などから、さまざまな研修の案内が届きます。

申請取次、丁重封印、著作権に関する研修など、その種類はさまざまです。
案内を見るたびに、「行政書士になった後も、まだ勉強は続くのか」と少し遠い目になります。

その中の一つが、特定行政書士になるための法定研修です。

特定行政書士になると、行政書士が作成することのできる官公署提出書類に関係する許認可等について、審査請求などの行政不服申立てを代理できます。

令和8年1月1日に施行された改正行政書士法により、その業務範囲は拡大されました。
以前は、行政書士が実際に作成した書類に関する案件に限られていましたが、現在は「行政書士が作成することができる書類」に関係する許認可等も対象となっています。

では、特定行政書士になれば仕事は増えるのでしょうか
今回は、ある許認可の相談をきっかけに考えたことを書いてみます。

特定行政書士とは

特定行政書士とは、所定の研修を修了し、考査に合格した行政書士です。
通常の行政書士業務に加えて、行政処分に対する審査請求などの行政不服申立てを、一定の範囲で代理できます。

令和8年1月の法改正後は、行政書士が最初の申請に関与していない場合でも、本人が行った許認可申請などについて、特定行政書士が不服申立てを代理できるようになりました。
制度上は、これまでよりも相談を受けられる場面が広がったといえるでしょう。

ただし、「役所の対応に納得できない」と感じれば、何でも不服申立てができるわけではありません。
問題となっている行政の対応が、法律上の不服申立ての対象となる「処分」に当たるかどうかなどを確認する必要があります。

「私は大いに不服です」という気持ちと、「法律上、不服申立てができます」という話は、似ているようで別のものです。

前回と今回で行政の対応が変わった

先日、ある許認可の更新について相談を受けました。

相談者によると、以前の手続では、行政側が個別の事情に応じて柔軟に対応してくれたそうです。

ところが、今回の更新では、「前回と同じ方法では対応できません」「今回は別の方法で確認する必要があります」と案内されたとのことでした。

行政から案内された方法に従うと、相談者には一定の手間や費用がかかります。
簡単に準備できるものではなく、専門の業者などを手配しなければならない事情もありました。

相談者としては当然、「前回は対応してもらえたのに、なぜ今回は駄目なのか」と疑問を感じます。

そこで、今回も同じ方法で対応してもらえないか、別の方法はないかということで、私のところへ相談がありました。

「これは不服申立ての出番では?」と考えた

この相談を受けたとき、私は一瞬、「これは特定行政書士の出番になるのではないか」と考えました。

行政から納得できない対応を受けた場合に、正式な手続で判断を争う。
一見すると、行政不服申立てが想定している場面にも見えます。

私は補助金や契約書作成を中心としており、許認可業務ばかりを取り扱っているわけではありません。
それでも、「行政の対応に納得できない」という相談を受けることがあります。

そう考えると、行政不服申立ては決して遠い世界の話ではありません。
身近な許認可や更新手続から問題が生じることもあります。

令和8年1月の法改正によって、特定行政書士が対応できる範囲も広がりました。
その意味では、今後、特定行政書士への相談が増える可能性はあるのかもしれませんね。

しかし、すぐに審査請求を勧めるのか

一方で、今回の相談者に、「それでは審査請求をしましょう」と勧められるかというと、正直なところ疑問です。

行政不服申立てを行えば、必ず主張が認められるわけではありません。

単に、「前回は対応してくれたのだから、今回も同じようにしてほしい」という理由だけで、行政の判断を覆すことは難しいでしょう。

前回から数年が経過していれば、法令や運用、行政機関の体制が変わっている可能性があります。
以前の対応が、個別事情を考慮した例外だったのかもしれません。
また、今回の相談では、正式な不許可処分が出たわけではありませんでした。
担当窓口から、手続方法について案内を受けている段階です。

そのような案内に不満があったとしても、直ちに行政不服申立てができるとは限りません。
いきなり「審査請求だ」と大砲を用意するには、少し早そうです。

戦う前に、まず理由を確認する

このような場合、最初に行うべきことは、行政と戦うことではないと思います。

まずは、なぜ前回と同じ対応ができないのか、その理由を確認します。
例えば、次のような点です。

  • 前回と取扱いが異なる理由は何か
  • 現在の方法に法令や基準上の根拠があるか
  • 写真、動画、図面などによる確認はできないか
  • 別の場所や方法で手続できないか
  • 個別事情を考慮した対応は可能か

行政側にも、以前と同じ対応ができない事情があるはずです。
人員や安全管理の問題かもしれませんし、検査方法が厳格になった可能性もあります。

理由を確認し、代替案を探した結果、それでも行政から案内された方法に従うしかない場合もあるでしょう。
その場合、不服申立てに時間と費用をかけるより、必要な業者を手配して手続を進めた方が、早くて確実かもしれません。

依頼者にとって重要なのは、行政に勝つことではなく、できるだけ少ない負担で問題を解決することだからです。

特定行政書士になれば仕事は増えるのか

特定行政書士になれば、対応できる業務の範囲は広がります。

特に、許認可業務を中心に取り扱っている行政書士であれば、申請から不服申立てまで継続して依頼者を支援できることは、大きな強みになるでしょう。

一方、私のように補助金や契約書作成を中心としている場合、資格を取得しても、不服申立てを実際に扱う機会がほとんどないかもしれません。

業務範囲が広がることと、自動的に仕事が増えることは別問題です。
残念ながら、資格証が夜中に営業へ出かけて、翌朝依頼を連れて帰ってくれるわけではありません。

研修には費用もかかり、学習時間も必要です。
そのため、取得するかどうかは、現在の取扱業務や今後の事務所方針を踏まえて考える必要があります。

行政書士の役割は「戦うこと」だけではない

特定行政書士による不服申立ての代理は、法律で認められた重要な業務です。
不利益な処分を受け、本当に救済を必要としている人にとっては、欠かせない制度でしょう。
ただ、行政書士の価値は、行政と争うことだけではないと個人的には思います。

申請前に問題点を整理する。
行政の担当者に事情を説明する。
別の方法を検討する。
不許可処分を受ける前に、許可を得られる形へ調整する。

こうした仕事も、行政書士の大切な役割です。

行政と依頼者の間に立ち、法律や制度の言葉と、現場の事情をお互いに伝わる形に訳していく。
私は、行政書士にはそのような「通訳者」としての役割もあると考えています。

まとめ|今のところ私は特定行政書士を目指さない

いろいろとうんちくを述べてきましたが、結論として、今のところ私は特定行政書士になる予定はありません。

そもそも私は、あまり争いごとが得意ではありません(苦笑)。
それに、行政の対応に納得できないからといって、すぐに争うことが依頼者の利益になるとは限らないと思っています。

まずは行政側の理由を確認する。
次に、申請方法を見直し、代替案を探す。それでも解決せず、正式な処分に問題がある場合に、初めて不服申立てを検討する。
その順番でよいのではないでしょうか。

今後、取り扱う業務が変われば、特定行政書士になることを改めて考えるかもしれません。

ただ、現時点での率直な感想は、「制度の必要性は分かる。でも、今の自分にはまだ必要ないかな」というところです。

行政書士やまもと事務所
🏠 岡山県倉敷市
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