車を運転しているとき、ある専門学校の校舎に「職業実践専門課程」と大きく書かれた垂れ幕が目に入りました。
通るたびに目にしていたのですが、正直「これって何のことなんだろう?」とずっと不思議に思っていたんです。

しかもその学校には、アジア系の外国人留学生らしき学生がたくさん通っていて、「もしかして留学生向けの特別な学校なのかな?」と思っていました。
ところが、行政書士として在留資格(ビザ)について学ぶ中で、その“職業実践専門課程”という言葉が、外国人が日本で働くための在留資格――
つまり「技術・人文知識・国際業務ビザ(通称:技人国)」と深く関係していることを知ったんです。
「ああ、そういうことだったのか!」と腑に落ちた瞬間でした。
ビザ(在留資格)には種類がある
外国の方が日本で働くには、当然ながら「ビザ(在留資格)」が必要です。
このビザにはいくつか種類があり、どんな仕事をするかによって分かれています。
たとえば ビザには技能ビザや技人国ビザなどがあり、特徴は以下――
- 技能ビザ:調理師・建設職人・家具職人など、「手に職」を活かす仕事向け
- 技人国ビザ:ITエンジニア・経理・設計・通訳など、「知識」や「専門性」を活かす仕事向け
というように、「技能」は体で覚える仕事、「技人国」は頭で学んだ知識を使う仕事、と考えるとイメージしやすいでしょう。

技人国ビザの原則は「大学卒」または「10年以上の実務経験」
技人国ビザを申請するためには、原則として次のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 大学・短大などを卒業していること
- 10年以上の実務経験があること(通訳・貿易など国際業務系は3年以上でも可)
つまり、大学で専門的な知識を学んだ人、または現場で長く経験を積んだ人が対象です。
一見すると「専門学校を出ただけでは申請できない」と思われがちですが――
実は、ここに例外があるんです。
「職業実践専門課程」を修了すれば、専門学校卒でも技人国を申請できる
この例外を支えているのが、文部科学省が認定する「職業実践専門課程」です。
この課程は、企業との連携や実習を重視した教育を行う専門学校を国が正式に認める仕組みで、実践的な職業教育を行うことを目的としています。
つまり、「ただの専門学校」ではなく、
「社会の現場とつながりながら、実務に直結する教育を行っている学校」
として文部科学省に認められた課程なのです。
この“職業実践専門課程”を修了し、専門士の称号を得た場合は、大学卒業者と同様に「技人国ビザ」の申請が認められるケースがあります。

言い換えれば、しっかりとした教育を受けた専門学校卒業者にも、専門職として働く道が開かれたということです。
「技能」と「技人国」では働く環境が大きく違う
この2つのビザ(技能・技人国)を比べると、日本での働き方がまったく違います。
「技能ビザ(技能実習)」は、“技術を学んで母国に持ち帰る”ことが目的です。
そのため、在留期間は最長で5年ほど。転職もできず、家族を呼ぶこともできません。
つまり、一時的に日本で学ぶための制度です。
一方の「技人国ビザ」は、日本でキャリアを積むことを前提とした在留資格です。
日本人社員と同じように働くことができ、転職も可能。
さらに家族を日本に呼ぶこともできるため、生活の基盤を日本に置いて働くことができるのです。
この違いは、外国人本人にとっても、受け入れる企業にとっても非常に大きいポイントです。
留学生が「職業実践専門課程」を目指す理由
こうした背景から、外国人留学生の中には、
「いずれは技人国ビザを取得して日本で長く働きたい」
「そのために職業実践専門課程のある学校を選んだ」
という方も多くいます。
実際、専門学校の先生方と話をしていると、留学生の勉強に対する姿勢に驚かされることがあります。
以前、ある先生がおっしゃっていました。
「留学生の子たちは“人生を賭けて学びに来ている”んです。
その覚悟と学ぶ姿勢は、日本人の学生とはまったく違います。」
言葉も文化も違う国で専門知識を学び、将来のキャリアを日本で築こうとする――その覚悟は本当にすごいものです。

職業実践専門課程を修了して技人国ビザを取得するというのは、そうした努力が正式に評価される仕組みでもあります。
だからこれは決して“抜け道”ではなく、真面目に学んだ人が正当に評価される道なのです。
外国人材の活躍が地域を支える
岡山や倉敷でも、専門学校には多くの外国人留学生が通っています。
彼らの中には、卒業後に地元企業に就職し、真面目に働いている方がたくさんいます。
「技能実習」で一時的に働く人も必要ですが、「技人国ビザ」で長く日本で活躍してくれる人が増えることは、地域経済の安定にもつながると感じます。
行政書士としても、こうした外国人材の就労や在留手続きをサポートすることは、単なる書類仕事ではなく、地域社会を支える重要な仕事のひとつです。
まとめ|職業実践専門課程は“チャンスの架け橋”
「職業実践専門課程」は、単なる教育制度ではありません。
それは、留学生が日本で学び、働き、暮らしていくための架け橋です。
制度の裏には、「実践的な教育を受けた人を、きちんと評価する」という国の考えがあります。
そしてその制度を通じて、日本社会は多様な人材を受け入れ、地域の企業も新しい力を得ています。
“技能”は技を学ぶ道。
“技人国”は知識を生かして働く道。
どちらも大切な役割を持っていますが、「職業実践専門課程」は、その2つの世界をつなぐ存在だと言えるでしょう。
外国人留学生の努力と覚悟に敬意を払いながら、制度を正しく理解し、支援していく――
それこそが、これからの行政書士に求められる役割のひとつだと思います。
行政書士やまもと事務所
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