みなさん、こんにちは。
岡山県倉敷市の行政書士やまもと事務所の山本です。
今回は 新たに事業を始める前に確認したい物件選びのポイントのお話をします。
これから新しく事業を始めようとするとき、多くの方が最初に考えるのは「どこで営業するか」ではないでしょうか。
事務所を借りる。
店舗を借りる。
倉庫を借りる。
空き家を買って事業所として使う。
古い建物を改修して、新しい事業を始める。
どれも、実際によくあるお話です。
特に郊外では、家賃が比較的安く、駐車場も広く、建物も大きい物件が見つかることがあります。
「ここなら事務所にできそう」
「ここなら福祉事業所にぴったり」
「駐車場も広いし、お客様も来やすそう」
「これはもう運命の物件では?」
そう思うこともあるかもしれません。

しかし、許可や指定が必要な事業を始める場合には、物件選びの段階で注意が必要です。
なぜなら、すでに建物が建っているからといって、その建物を自由に事業用として使えるとは限らないからです。
特に、市街化調整区域で事業所を開設したい場合は、事前確認がとても大切です。
市街化調整区域とは?
市街化調整区域とは、簡単にいうと「原則として市街地を広げないようにする区域」です。
住宅、店舗、事務所などがどんどん建って、市街地が広がりすぎないようにするための区域です。
そのため、市街化調整区域では、新しく建物を建てる場合だけでなく、すでにある建物を別の用途で使う場合にも制限がかかることがあります。

ここで大切なのは、問題になるのは「新築」だけではないという点です。
たとえば、すでに建っている建物でも、以下のような確認が必要になることがあります。
「この建物は何の目的で建てられたのか」
「住宅として認められた建物なのか」
「倉庫として使われていた建物なのか」
「事業所として使ってよい建物なのか」
「過去にどのような許可を受けているのか」
つまり、市街化調整区域の物件選びでは、単に「建物があるかどうか」ではなく、その建物を予定している用途で使ってよいかが重要になります。
建物があるから大丈夫、というよりも、「その使い方、役所的には大丈夫ですか?」という確認が必要です。
ここを飛ばすと、あとで冷や汗が出ます。
真冬でも出ます。
許可が必要な事業では物件確認が特に重要です
次のような事業では、営業許可、指定、登録、届出などが必要になることがあります。
飲食店、美容室、理容室、旅館業、民泊、古物商、建設業の営業所、産業廃棄物収集運搬業の事務所や駐車場、障害福祉サービス事業所、就労継続支援B型事業所、放課後等デイサービス、介護事業所、リサイクル作業場、食品製造・加工場などです。
このような事業では、「事業そのものの許可要件」だけでなく、その場所でその事業をしてよいかを確認する必要があります。

たとえば、障害福祉サービス事業所を始める場合には、人員基準、設備基準、運営基準、定員、サービス管理責任者の配置、相談室や訓練作業室の確保など、さまざまな指定基準があります。
しかし、その前に大切なのが、そもそもその建物を福祉サービス事業所として使えるかという確認です。
人員もそろった。
設備も整えられそう。
内装のイメージもばっちり。
あとは開業するだけ。
……と思った後で、「この場所では難しいです」と言われてしまうと、計画全体を見直すことになります。
これは、かなり痛いです。
財布にも、心にも。
物件契約の前に確認したいポイント
事業を始めるときは、どうしても許可申請や指定申請の方に目が向きがちです。
しかし、物件を借りたり購入したりする前には、まず次のような点を確認することが大切です。
その土地が市街化区域なのか、市街化調整区域なのか。
建物の現在の用途は何か。
建築確認済証や検査済証はあるか。
過去に開発許可を受けているか。
住宅、店舗、倉庫、工場など、どの用途として建てられているか。
予定している事業用途で使えるか。
用途変更の確認申請が必要か。
消防設備の追加が必要か。
接道や駐車場に問題はないか。
農地や農振農用地に該当しないか。
これらを確認せずに契約してしまうと、あとから大きな問題になることがあります。
たとえば、こういったことを言われる可能性があります。
「この建物では福祉事業所として使えません」
「用途変更の手続きが必要です」
「消防設備の追加工事が必要です」
「市街化調整区域なので、この用途では難しいです」

物件を契約した後にこのような話が出てくると、家賃や購入費、改修費、開業準備費が無駄になってしまうこともあります。
「先に知っていれば……」という事態を防ぐためにも、物件選びの段階での確認が重要です。
都市計画法の確認が必要になることがあります
市街化調整区域の既存建物を事業用に使う場合、都市計画法の確認が必要になることがあります。
特に、都市計画法42条や43条が問題になることがあります。
細かい条文の説明は少し難しくなりますが、ざっくりいうと、過去に許可を受けた土地や建物について、当初予定されていた用途と違う使い方をしてよいか、また、市街化調整区域内で建物を別の用途に使う場合に許可が必要か、という点が問題になります。
たとえば、住宅として認められて建っている建物を、福祉事業所や作業場として使いたい場合、行政から見ると、こうなることがあります。
「その建物は住宅として認めたものです」
「事業所として使うなら、別途確認が必要です」

もちろん、すべてのケースで許可が必要になるわけではありません。
過去の許可内容、建物の用途、予定する事業内容、改修の有無、面積、地域ごとの運用などによって判断は変わります。
そのため、物件ごとに行政窓口へ確認することが大切です。
国土交通省も、市街化調整区域にある空き家など既存建築物の用途変更について、一定の場合に運用の弾力化を示していますが、あくまで個別判断が必要です。
地域や用途によって扱いが異なるため、事前相談は欠かせません。
建築基準法と用途変更にも注意しましょう
「建築確認」と聞くと、新しく建物を建てるときだけの話だと思われるかもしれません。
しかし、既存建物でも、使い方が変わる場合には、建築基準法上の確認が必要になることがあります。
たとえば このような場合、建築基準法上の「用途変更」に該当するかどうかを確認する必要があります。
住宅を福祉施設として使う。
倉庫を作業場として使う。
店舗を通所型の事業所として使う。
工場を別の用途に変える。

一定の用途や規模に該当する場合には、用途変更の確認申請が必要になることがあります。
また、確認申請が不要な場合でも、建物が新しい用途に必要な基準を満たしているかどうかは別途確認が必要です。
接道、避難経路、採光、換気、トイレ、バリアフリー、建ぺい率、容積率、既存不適格、違反建築の有無など、確認すべき点は多くあります。
建築基準法上の技術的な判断や用途変更確認申請は、建築士の専門領域です。
行政書士は、物件資料を整理し、行政窓口への確認事項をまとめ、必要に応じて建築士と連携しながら手続きを進めるサポートができます。
消防署への事前相談も忘れずに
事業所として人が出入りする建物になる場合、消防法上の確認も必要です。
特に、福祉施設、店舗、作業場、宿泊施設などでは、建物の規模、利用人数、事業内容によって必要な消防設備が変わります。
確認すべき主な内容としては、防火対象物の用途区分、収容人員、消火器、自動火災報知設備、誘導灯、避難経路、防火管理者、防火対象物使用開始届などがあります。
消防署では、平面図や予定人数、利用方法などがないと具体的な判断が難しい場合があります。
そのため、物件を検討する段階で、平面図、建物面積、予定定員、職員数、作業内容などを整理して、消防署に事前相談することが大切です。
管轄消防署への確認は早めに行いましょう。

不動産会社からもらっておきたい資料
物件を検討する段階では、不動産会社や所有者から、できるだけ資料を集めておくことが大切です。
確認したい資料としては、物件の所在地、地番、土地・建物の登記事項証明書、公図、地積測量図、建築確認済証、検査済証、建築計画概要書、配置図、平面図、建物の現在用途、過去の開発許可の有無、接道状況、前面道路の種類や幅員、駐車場台数、改修工事の可否などがあります。
賃貸物件の場合は、用途変更や改修工事について、所有者の承諾が得られるかも重要です。
不動産サイトに「事務所可」「店舗可」と書かれていても、それだけで安心するのは危険です。
不動産上の募集条件と、行政上その用途で使えるかどうかは、別の問題だからです。
「事務所可」と書いてあっても、許認可の世界では「はい、どうぞ」とならないことがあります。
物件情報の文字だけを信じすぎると、後で「話が違うじゃないですか選手権」が開幕します。
確認する順番が大切です
市街化調整区域で事業所を開設したい場合は、確認する順番も重要です。
まずは、物件候補を見つけます。
次に、不動産会社や所有者から、地番、建物用途、建築確認関係、図面、過去の許可関係の資料を集めます。
そのうえで、市町村の都市計画担当や開発許可担当に、市街化調整区域でその用途に使えるかを確認します。
次に、建築担当部署や建築士に、用途変更確認申請の要否や建築基準法上の問題を確認します。
さらに、消防署に、必要な消防設備や届出を確認します。
その後、事業ごとの許可・指定担当に、営業許可や事業指定の要件を確認します。
といった感じで、流れとしてはこういう順番になります。
- 物件資料を集める
- 都市計画法上の確認をする
- 建築基準法上の確認をする
- 消防法上の確認をする
- 事業ごとの許可・指定要件を確認する
- 契約や改修に進む
この順番を間違えると、あとから「そもそもこの場所では難しいです」と言われる可能性があります。

行政書士がサポートできること
市街化調整区域の物件を使って事業を始めたい場合、行政書士は次のようなサポートができます。
- 相談内容の整理
- 物件資料の確認
- 不足資料の洗い出し
- 行政窓口への事前相談
- 都市計画法上の論点整理
- 許認可・指定申請の要件確認
- 消防や農地法など関連手続きの確認
- 建築士など専門家との連携
- 事業開始までの手続き全体の整理
などです。
一方で、建築確認申請、用途変更確認申請、建築基準法上の技術的判断、図面作成などは建築士の専門領域です。
そのため、行政書士がすべてを単独で行うというよりも、行政書士が全体の手続きや確認事項を整理し、必要に応じて建築士などの専門家と連携する形が現実的です。
まとめ|物件契約の前に「その用途で使えるか」を確認しましょう
許可が必要な事業を始める場合、物件選びはとても重要です。
特に、市街化調整区域にある既存建物を使う場合は、注意が必要です。
すでに建物が建っているからといって、その建物を自由に事業所として使えるとは限りません。
住宅として建てられた建物を福祉施設として使う。
倉庫を作業場として使う。
空き家を店舗として使う。
郊外の建物を事業所として使う。
このような場合には、都市計画法、建築基準法、消防法、農地法、そして事業ごとの許可・指定要件を順番に確認する必要があります。
物件を買った後、借りた後に「この用途では使えません」となると、大きな損失につながります。
だからこそ、物件契約の前に確認することが大切です。
「建物があるから大丈夫」ではなく、「その建物を、その用途で使ってよいか」を確認しましょう。
当事務所では、許可が必要な事業を始める方向けに、物件選びの段階から必要な確認事項を整理し、行政窓口への事前相談や許認可手続きの確認をサポートしています。
倉敷市・岡山県内で、市街化調整区域の物件を使った事業所開設や、許認可が必要な事業の物件選びでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
事業を始める前に、まずはリスクを確認すること。
それが、スムーズな開業への第一歩です。
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