みなさん、こんにちは。
岡山県倉敷市の行政書士やまもと事務所の山本です。
今回は 重要伝統的建造物群保存地区についてお話しします。
お盆休みを利用して、高知県室戸市までドライブに行ってきました。
目的地は室戸岬だったのですが、その途中で立ち寄ったのが室戸市吉良川町です。

町を歩いてみると、白壁の建物や瓦屋根、石垣などがまとまって残っていて、どこか懐かしい雰囲気がありますね。
中でも印象的だったのが、白壁の途中に瓦を何段も取り付けた「水切り瓦」や、丸い石を積み上げた「いしぐろ」。
「昔の建物が残っている町なんだな」と思いながら歩いていたのですが、調べてみると吉良川町は、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている町でした。

そこで行政書士として気になったのがあります。
それは「こういう場所に家を持っていたら、自由にリフォームできるの?」ってこと。
さらに倉敷市で行政書士をしている身分として気になるのは、「倉敷美観地区とは何が違うの?」という疑問。
普通に観光して帰ればいいものを、旅行先でも結局「許可」や「条例」が気になってしまう。
もうこれは職業病ですかね(笑)。
今回は、吉良川町をきっかけに、重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)の建物にどのようなルールがあるのか、倉敷美観地区とは何が違うのかを、できるだけ分かりやすくご紹介します。
重要伝統的建造物群保存地区とは?
「重要伝統的建造物群保存地区」
なかなかの長さです。
行政用語らしいといえば行政用語らしいですが、毎回フルネームで呼んでいると少々疲れます。
一般には「重伝建(じゅうでんけん)」と呼ばれています。
重要伝統的建造物群保存地区とは、歴史的な町並みや集落のうち、特に価値の高い地区を国が選定する制度です。
昭和50年(1975年)の文化財保護法改正によって制度が始まりました。
重伝建制度の特徴は、古い建物を一軒だけ保存するのではなく、町並み全体を歴史的な環境として守ること。
例えば、以下などを含めて保存していきます。
- 昔から残る町家や商家
- 蔵
- 塀や石垣
- 建物の配置
- 周辺の自然環境
まず市町村が条例などに基づいて「伝統的建造物群保存地区」を定め、その中でも特に価値の高い地区について、市町村からの申出を受けて国が「重要伝統的建造物群保存地区」に選定します。
つまり、市町村が保存地区を決める → その中から特に重要な地区を国が選定するという仕組みです。

吉良川町の町並みは何が特徴なの?
吉良川町は、木炭の生産や流通などによって栄えた歴史を持つ町です。
その繁栄を背景に建てられた建物が現在も残り、白壁や水切り瓦、「いしぐろ」と呼ばれる石垣などが特徴的な景観をつくっています。
特に面白いのが水切り瓦です。

高知県東部は雨や台風の影響を受けやすいため、壁に当たる雨水を少しでも外へ逃がすよう、白壁の途中に瓦を取り付けています。
つまり、単に「昔風でおしゃれだから付けました」というものではありません。
地域の気候の中で建物を守るために生まれた工夫なのです。
歴史的な町並みの魅力は、見た目だけではなく、その土地で暮らしてきた人たちの知恵が建物に残っているところにもあります。
重伝建地区では自由にリフォームできない?
では、重要伝統的建造物群保存地区にある家は、自由にリフォームできないのでしょうか。
さすがに、「釘一本打つのにも国の許可が必要です!」という世界ではありません。
ただし、普通の地域と比べると、建物や町並みの外観に影響する工事について、自治体の許可などが必要になる場合があります。
外壁や屋根の色・形を変更するとき
「外壁が傷んできたから、今度は真っ赤に塗ろう」
「せっかくだから全面的に洋風にしよう」
例えば、上記のような工事は、建物単体だけを見れば問題がなくても、歴史的な町並みとの調和という点で確認が必要になります。
重伝建地区では、その家だけではなく、町並み全体としてどう見えるかが重要になるわけです。
新築・増築・改築するとき
保存地区だからといって、新築がすべて禁止されているわけではありません。
ただし、新しい建物を建てたり、増築や改築をしたりする場合には、建物の高さ、外観、屋根、色などについて町並みとの調和が求められることがあります。
「自分の土地だから好きな建物を建てます」だけでは進められない可能性があるということです。
建物を取り壊すときも注意
特に注意したいのが解体です。
保存地区では建物の取り壊しも現状変更として扱われることがあり、自治体への事前確認が必要になります。
また、保存地区の建物がすべて同じ扱いになるわけではありません。
歴史的価値が高いものとして保存計画上「伝統的建造物」に特定されている建物と、それ以外の建物では、修理や解体などの取扱いが異なる場合があります。

したがって、重伝建地区で中古住宅や古民家を購入するときは、「重伝建地区内かどうか」だけでなく、「その建物自体がどのような位置付けなのか」まで確認しておくことが大切です。
規制だけではなく、修理や修景への補助もある
ここまで読むと、「古い建物を持っている人は大変そうだな……」と思われるかもしれません。
確かに、一般的な地域よりも建物の変更に制約があります。
しかし、歴史的な建物を個人の負担だけで維持していくのも大変です。
そこで重伝建地区では、伝統的建造物の修理や、町並みに合わせて建物の外観を整える「修景」、防災設備の整備などについて支援制度が設けられています。
つまり制度としては、「勝手に変えないでください」だけではありません。
「町並みを守るための工事には行政も支援します」という両輪で成り立っています。
吉良川町と倉敷美観地区は何が違う?
ここで倉敷市民として一番気になったところです。
吉良川町は「重要伝統的建造物群保存地区」。
倉敷は「美観地区」。
名前が違うので別の制度かと思いきや、実はそう単純ではありません。
倉敷美観地区の中心部も、国の重要伝統的建造物群保存地区です。
倉敷市の「倉敷市倉敷川畔伝統的建造物群保存地区」は、昭和54年(1979年)に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。
つまり、吉良川町も重伝建。
倉敷川畔も重伝建。
実は同じ制度の仲間なのです。
「高知まで行って、結局倉敷と同じ制度を調べていた」という、なんとも行政書士らしい旅行になりました(苦笑)。

倉敷美観地区は「第一種」と「第二種」がある
ただし、倉敷美観地区は少し仕組みが複雑です。
倉敷市によると、美観地区には大きく分けて、第一種美観地区と第二種美観地区があります。
第一種美観地区にあたる倉敷市倉敷川畔伝統的建造物群保存地区は、国の重要伝統的建造物群保存地区です。
一方、第二種美観地区には、倉敷市が条例によって保存する伝統美観保存地区があります。
整理すると、以下になります。
| 地区 | 主な位置付け |
|---|---|
| 室戸市吉良川町 | 国選定の重要伝統的建造物群保存地区 |
| 倉敷美観地区・第一種 | 倉敷川畔重要伝統的建造物群保存地区 |
| 倉敷美観地区・第二種 | 倉敷市独自の伝統美観保存地区 |
したがって、「吉良川町は重伝建、倉敷は美観地区だからまったく別物」というわけではありません。
むしろ、倉敷美観地区の中心部も重伝建制度で守られ、その周辺についても倉敷市独自の条例などによって景観を守っている、と考えると分かりやすいでしょう。
倉敷美観地区で古民家カフェや宿を始めるなら要注意
重伝建地区の建物を見ていると、「ここをカフェにしたら良さそう」「一棟貸しの宿にしたら人気が出そう」と思うこともあります。
実際、歴史的な建物を活用した店舗や宿泊施設は魅力があります。
ただし、物件を契約してから許可を調べるという順番はおすすめできません。
例えば契約後に、「希望していた外観に変更できない」「その看板は設置できない」「予定していた改修方法では難しい」となれば、事業計画そのものを見直すことになります。
倉敷市の美観地区でも、建物の位置、規模、形態、意匠、色彩などについて、伝統的な建築や周辺の町並みとの調和を求めるルールがあります。
さらに、店舗や宿泊施設として利用するなら、重伝建や景観のルールだけでなく、以下のような法律や条例が関係する可能性もあります。
- 建築基準法
- 消防法
- 旅館業法
- 飲食店営業許可
- 屋外広告物関係の規制
- 景観関係の条例
だからこそ重要なのが、「この物件で、自分が考えている事業ができるのか」を契約前に確認することです。

町並みが残っているのは偶然ではない
今回、吉良川町を歩いて改めて感じたのは、歴史的な町並みというのは、ただ偶然古い建物が残っているわけではないということです。
「古くなったから全部新しくしよう」
「目立つように派手な看板を付けよう」
「面倒だから壊して駐車場にしよう」
もし一軒一軒の所有者が、こんな感じで自由に変更していけば、何十年か後には町並みそのものが失われてしまいます。
そこで一定のルールを設ける一方、修理や修景を支援し、地域全体で景観を残していく。
それが重伝建制度の大きな役割です。
観光客として歩いていると、「古い建物がきれいに残っているな」くらいで通り過ぎてしまいます。
しかし、その景色の裏側には、条例があり、保存計画があり、許可制度があり、補助制度があります。
そう考えると、町歩きもちょっと違って見えてきます。
……まあ、旅行中くらい仕事を忘れればいいのですが(笑)。

まとめ|重伝建地区で事業をするなら「契約前の確認」が大切
ということで、今回は、重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)の建物にどのようなルールがあるのかをご紹介しました。
今回のお話 いかがでしたでしょうか。
室戸市吉良川町のような重要伝統的建造物群保存地区では、歴史的な町並みを守るため、建物の外観変更、新築・増築・改築、解体などについて、通常の地域とは異なるルールが設けられています。
一方で、修理や修景、防災設備などへの支援制度もあり、行政と所有者が一緒に町並みを守っていく仕組みになっています。
そして、倉敷美観地区の中心部である倉敷川畔伝統的建造物群保存地区も、吉良川町と同じ重要伝統的建造物群保存地区です。
こうした地域の古民家などを活用して、カフェ、飲食店、宿泊施設などを始める場合には、物件を契約したり工事を始めたりする前に、必要となる許可や届出を確認しておくことが大切です。
当事務所では、倉敷市を中心に、事業を始める際の許認可や行政手続、補助金に関するご相談をお受けしています。
「倉敷美観地区の物件でお店を始めたいけれど、何から確認すればいいのか分からない」
「古民家を宿泊施設として活用したいけれど、どんな許可が必要?」
といった場合には、物件の契約や改修工事を進める前にご相談ください。
事業を始めてから許可を探すより、許可を確認してから事業を始める。
一見遠回りに見えても、結局それが一番安心できる近道です。
行政書士やまもと事務所
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